生活期で呼吸法その3 なぜ、いきんではいけないの?

知識の小箱

はじめに

 生活期で呼吸法 その2 自律神経を整える呼吸法(導入編)の注意事項の1番目に「いきまない」と書きました。今回は、「なぜ、いきんではいけないのか?」を簡単に解説します。
 起き上がり動作や排便時など、生活上いきむ習慣のある利用者さんもいると思います。呼吸法だけではなく、生活への助言や指導にも活用できる知識だと思います。
 利用者さんへの指導や自身の体調管理に活用していただけたら幸いです。

いきみとは

 怒責ともいいます。
 
 様々な定義はあるようですが、ここでは久保田武美先生の定義を紹介します。

「息を吸って吐こうとするが、吐かずに息を止めて力をいれること

久保田武美 入門編・丹田呼吸の科学の実践 パブフル 令和2年5月 p77より

いきむとどうなるか

 秒単位の短い間に血圧が急激にします。その際、以下のリスクがあります。

  上がった時:脳出血など

  下がった時:失神など

 命に関わる場合もあります。なので、いきまない方がいいのです。

 よく、「息を止めると血圧が上がる」と聞きますが、上がるだけではなく下がります。

血圧が変動する機序

① 息を止めて強く力を入れる
② 胸の周囲の筋肉が働いて胸の奥が圧迫される
③ 胸の奥が圧迫されると心臓も圧迫される

④ 心臓が圧迫されると静脈から戻る血液が心臓に戻れなくなる
⑤ 心臓から動脈に出ていく血液が減る ※1
⑥ 血圧急降下

⑦ 血管にある圧力センサーが血圧低下を察知 ※2
⑧ 交感神経を刺激(血圧を上げろ!という反応)、血圧が急上昇 ※3

⑨ 血管にある圧力センサーが血圧上昇を察知

⑩ 副交感神経を刺激(血圧を下げろ!という反応)、血圧急降下

※1:Frank-Starling(フランクスターリング)の法則
 看護roo 現場で使える看護知識 心臓のポンプ機能 https://www.kango-roo.com/learning/7106/
※2 : 圧受容体
 看護roo 現場で使える看護知識 循環調整 https://www.kango-roo.com/learning/7107/
※3 : 自律神経
 生活期で呼吸法 その1 自律神経と呼吸の関係

おわりに

もともと高血圧・低血圧、頻脈・徐脈がある人は、いきみによって生じるリスクが高くなります。

体幹機能を中心とする運動機能が低下している方は、起き上がり、立ち上がり動作などでいきみやすくなります。慢性的な便秘で排便時にいきむ習慣がある方もいます。高血圧・低血圧、頻脈・徐脈でいきむ習慣のある人には繰り返しいきまないようお伝えしています。特に1,2秒ではなく長くいきむ人は注意しています。

普段から呼吸法をしていると、いきんでいることに気づきやすく、いきみそうになった時に息を吐いて胸腔内圧を下げる対応がしやすくなります。

 

【 参考文献 】
久保田武美 入門編・丹田呼吸の科学の実践 パブフル 令和2年5月

 産婦人科医である久保田先生が、丹田呼吸について超音波やMRI・腹圧計・筋電計・胸腔内圧計などを駆使して実験した結果をもとに書かれています。呼吸中の腹部の動きをMRIでとらえたプレゼント動画を紹介しています。この動画、一見の価値ありです。呼吸が内臓に及ぼす影響を動画で見ることが出来ます。

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