生活期で呼吸法 その2 自律神経を整える呼吸法(導入編)

知識の小箱

はじめに

 ここで紹介する呼吸法は、呼吸リハビリテーションや呼吸理学療法など呼吸器疾患に対するものではなく、自律神経を整えることを目的としたものです。
 利用者さん、ヘルパーさん、ケアマネさんにも読みやすいように心がけました。
 自主練習の指導や自身の体調管理に活用していただけたら幸いです。

注意事項

  1. いきまない
  2. 息をつめない
  3. 楽に行う
  4. めまいやクラクラする感じがあれば中止
  5. 徐脈など、副交感神経優位になると状態が悪化する可能性がある人には実施しない
  6. 心配なら主治医の先生に相談する

吸う時間と吐く時間

 副交感神経を活性化させるため、基本的に吐く時間を長くします。
 吸う時間を1として、吐く時間を2から始めます。

  吸う時間1 : 吐く時間2

★ どれくらい吸っているかなどの時間は気にせずに始めます、比率を意識します
★ 慣れてきたら吐く時間を3・4と長くしていき5を最終地点とします

鼻からか口からか?

 鼻から吸います
 口をすぼめて口から吐きます

★ 「ふーっ」など、音がしない程度に緩やかに吐きます
★ 慣れてきたら吸うときも吐くときも鼻からにします

動かす部位(はじめは出来たらで)

お腹を動かして呼吸します
吸うときにお腹が膨らむ 吐くときにお腹がへこむ

★ 始めはお腹を大きく動かさずに動きを感じる程度から始める
★ 肩や背中に力が入らないように意識する
★ まったくできない人もいるので無理はしない

姿勢

 決まった姿勢はありません、呼吸のしやすい姿勢から始めます

 姿勢による特徴の一部を以下に書きます
 ① 仰向け(背臥位)
  ★ 基本的な安楽姿勢、膝を立てた方が楽な人もいる
  ★ 硬い床ですると胸郭の動き出にくいので中を意識しやすい
 ② 横向き(側臥位)
  ★ お腹の筋肉が緩みやすい
 ③ 座って(座位)
  ★ 内臓の重さが横隔膜にかからない
  ★ 重力に負けないように姿勢を保つ必要がある

★ 慣れてきたら立って、歩きながら出来るようになると良い

時間と頻度

 時間 : 5分~30分
 頻度 : 1日に1~2回 

★ 時間が取れない場合は2分くらいから始める
★ 手足が暖かくなってくるのは上手くできているから
★ 1回の時間を長くするよりも、頻度を多くする

どんな場面で(できたら)

 呼吸に集中できる場面で行うのがベスト

★ できるだけ静かなところ
★ テレビやラジオ、歌詞のある音楽はかけない
★ 歌詞のない好きな音楽はOK
★ お香など好きな香りもOK

おわりに

運動療法・徒手療法の反応があるけど直ぐに戻る、揺り戻しのように症状が強くなるなど「治癒機転に入っていない」感じの利用者さんは自律神経が失調している可能性があると思います。そんな時に、評価したうえで活用します。

呼吸法では、複数のことを同時に意識します。人間が同時に処理できる事柄は2つまでだそうです。高齢になれば2つのことを同時に処理することも難しくなってきます。自律神経が失調している人は呼吸のコントロールが難しい方が多いのでなおさら難しくなります。私たちも、苦手なことを2つ同時にするのは難しいですもんね。

1回指導しただけで習得することは、まず難しいと思います。

私は、「3か月位は習得、変化を感じるまでにかかることが多いです。焦らず・諦めずに少しづつやっていきましょう」とお伝えしています。

サービスを提供する側もストレスで自律神経が失調しやすいと思いますので、自分自身で試してみることをお勧めいたします。

きっと、自分自身の体や体調、精神状態について新たな気づきがあると思います。

生活期で呼吸法を生かすの基礎的考えについては以下を見てください。
生活期で呼吸法 その1 自律神経と呼吸の関係

【 参考文献 】
坂田隆夫 「自律神経を整える「長生き呼吸」 株式会社マキノ出版 2016

 循環器の専門医であり、ヨガや呼吸法に精通している先生の本です。呼吸が自律神経どのように影響するのかが、医療機器で測定したしっかりとしたデータで示されています。利用者さんに呼吸法が自律神経に与える効果を医学的に説明する際に大変有意義な本だと思います。

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